日本テレビの視聴率操作の背景

これはテレビ局だけの問題ではない。

テレビにおいては、CMが主で、番組が従である、ということは多くの方がご存知のことだろう。
テレビ局も、他の企業と同じように資金流入がなければ成立しえず、その資金のほとんどは、広告主に媒体スペースや媒体タイムを売ることによって得ることができるのである。
一方、広告主が媒体スペースや媒体タイムを買いたいと思うのは、テレビの視聴者である消費者に広告(CM)を到達させることができるからである。
言い換えると、視聴者がいないのなら、わざわざ高いお金をテレビ局に支払う理由はないわけである。
今回の事件、ならびに昨今の視聴率至上主義と呼ばれるテレビ局の姿勢は、このことと強く関連しているとみることができる。
つまり、広告主の態度がテレビ局をそういった態度にさせている、と言うことができるのである。

広告に携わっている人は理解していると思うが、現在ではCMのことを考える際には、「視聴率」を見るのではなく、「視聴質」を見ることが重要であると言われている。
これを極端な例を用いて説明すると、「ある商品の購買対象者の1%が見ている、視聴率30%の番組に挿入するCM」よりも、「その商品の購買対象者の90%が見ている、視聴率5%の番組に挿入するCM」のほうが価値は高いということである。
しかし、これも広告に携わっている人、あるいはテレビ局に勤めている人には生きた実感として捉えられると思うが、広告主に「この枠は視聴率は低いのですが、視聴者の多くがあなたがたがターゲットにしている人たちで構成されているのです」と言っても理解してもらえないことが多いのである。
実際、アメリカでは、しばしば視聴率操作事件が起こっている。

今回の事件で浮き彫りになったのは、広告主の広告についての無理解であろう。今後も広告主が広告に関して理解する努力を放棄し続けるならば、表出するとしないとに関わらず、視聴率操作が起こり続けるのは止むを得ないと言える。

企業のミドル・マネジメント以上の方々には、ぜひ広告に関する本を読んでもらいたい。本格的に学ぶ必要はない。2、3冊の本を読む時間と、お金とは十分にあるはずだ。
  • M 宮 Y 介
  • 2003/10/29 (Wed) 23:02