ネットポリスのPCは荒らし界隈にある廃墟の一つに集合していた。
 「ただいま戻りました」
 偵察しに行ったPCが戻ってくると、リーダー格の男になにやら耳打ちする。
 それに、男は満足そうに笑ったかと思うと窓際に凭れて外を眺めていたPCに声をかけた。
 「梶山さん、あなたの仕掛けた罠は成功したそうです」
 その言葉に、周りのPC達がざわめく。
 梶山と呼ばれたPC自身も、驚いたようだった。
 「では、暗黒元帥は死んだということですか?」
 彼の問いかけに、男は笑いながら頷く。
 「フェイと名乗るPCと、相打ちになったそうです」
 「……それは…」
 大般若長光を持ち、黒髪を揺らしていた彼の姿を梶山は思い出す。
 バグが乱入してきた時に、もはや彼では元帥を討てないと見切りを付けて撤退したのだが、思いの他頑張ってくれたらしい。感謝すると同時に、簡単に騙されてくれたことへの笑いがこみ上げて来た。
 「これで、暗黒元帥側の勢力は出てきませんね」
 「えぇ、貴方の機転にはいつも感心しますよ」
 梶山の言葉に、男は頷くと立ち上がる。
 「では、そろそろ行きましょうか…」
 彼の言葉に促されるように、PC達は動き出す。
 軋んだ音を立てて開かれたドアの先にあったのは、荒らし界にはおおよそ似つかわしくないほど透き通った真っ青な空だった。

 「動くぞ…」
 隠れて彼らを見張っていた偵察部隊が、無線を飛ばす。
 「了解です、偵察さんも適度に切り上げてください」
 応答があったのを確認した偵察部隊はゆっくりその場を離れると、簡易転送ゲートを取り出した。



Good luck on your travel
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#15.5 幻影処断