場所は、Degradationの中庭。 空も暗くなり、唯一立っている外灯が辺りの様子をおぼろげながらに照らす。 半ば朽ちかけた噴水の縁に座って、足利尊氏はとある人物を待っていた。 「待たせたな」 「遅いぞ」 約束の時刻を大分遅れて茂みの中からやってきた八宝斉に、尊氏は文句を言う。 彼は目線だけで謝ると、周囲の様子に気を配った。 誰も居ないことを確認したのか、改めて尊氏に向き直る。 「それで、元帥の耳に入れたい情報っていうのはなんだ」 わざわざ秘密裏のメールを貰ってここまで来たんだから、どうでもいいような情報だったら怒るぞ、と八宝斉は脅したが尊氏はそれに構わずとある人物の名前を告げた。 それに、八宝斉の目が見開かれる。 「……それは本当か…!?」 「あぁ、間違いない。故・荒らし幕府で姿を見たんだ」 尊氏の言葉に確かにこれは元帥の耳に入れるべき情報だ、と納得する。 「分かった、元帥には俺から言っておく」 「頼んだ…、何か嫌なことが起きるような気がしてならないんだ」 不安そうにいう尊氏に八宝斉は頷くと、すぐさま転送ゲートを開いて他の場所へ飛ぼうとした。 それに尊氏が待ってくれ、と声をかける。 「あ、あと…」 「まだ何かあるのか?」 「いや、なんでもない……」 訝しがって振り返った八宝斉に、尊氏は言いかけた言葉を飲み込んだ。 「そうか?」 それなら良いが、とだけ言うと八宝斉はすぐにDegradatioを後にしてしまった。 一秒でも早く、暗黒元帥にこの情報を知らせたかったのだろう。 残された尊氏はあの時、同じ場所にいたもう一人のPCの存在を伝えようとしたが、名前も所属も不明で外見しか分からない人物を伝えたところで役に立つ訳がないだろう、と思い直して口を噤んだ。 Good luck on your travel |