「証」 どういう訳かその日。 俺は猛烈に機嫌が悪かった。 朝起きて、飯を食って。 いつもの様にサーバーにログインした俺は、取り合えずそこら辺をブラブラと歩く事にした。 もちろん、「そこら辺」といってもそれは普通の世界じゃない。 UGといわれる健全なネット使用者にはうざがられている世界をだ。 「・・・・ん? 此処は・・・。」 うっかりとしていたのか、気が付けば俺はUGの世界でもタチの悪い観賞植物系などのサイトが並ぶ所へと来てしまっていた。 横を見ても、前を見ても、後ろを見ても、風俗街を思わせるような派手なネオンが並んでいて目がチカチカする。 「よぉ!そこの兄さん。夢見るキノコ、安くしておくけど買っていかないかい!?」 「いや、うちのを買っていきなよ。品質抜群だぜ!」 一歩足を進める度に話しかけてくるサイトの店員達は正直ウザくて叶わない。 いっその事半殺しにでもしてマッシュルーム片っ端から奪うか・・・? 市場で売りさばいたら結構な金になるだろう。 などと俺の脳裏に一瞬不穏な考えがよぎったがそれは流石にまずいだろう。と思い直した。 「・・・悪いな。遠慮しておく。」 そういって俺は勧誘の奴らの引き止める手を振り払うとそこから去ろうと足早に歩き始めた。が。 「・・・詐欺だっ!そいつを捕まえてくれっ!!」 突然窓の割れる音と舞い散る破片と共に人が俺の目の前に飛び出してきた。 お約束のサイトの管理人の罵声付きでだ。 もっとも、俺は優しい奴じゃないから目の前に犯罪者が降ってこようと捕まえてやろうだなんてこれっぽちも普段だったら思わない。 詐欺なら詐欺に騙される方が悪いに決まっている。 それがこの世界の決まりごとなのだから・・・。といいたいところだったのだが。 ・・・今回ばかりは状況が違った。 「・・・・・・!?」 目の前に降って来た人間はちらりと俺の方を見ると驚いたような顔をしやがった。 俺も、本来なら此処にいるはずのない人間の出現に驚いて其処に固まっちまった。 あとにして思えばそれが運の尽きだったんだ。 逃げ出すとかすればよかったんだ。と猛烈に後悔している。、 ・・・と、いきなり何を奴は思ったのか、俺の肩をポンッと叩くと満面の笑みでこう言ったんだ。 「あと、よろしくw」 そういうが早いが奴は猛ダッシュで街中を走り抜けるとあっという間に姿を消していった・・・。 もちろん、あとに残されたのは俺の背中に刺さる詐欺にあったサイトの管理人の視線。 はっきり言ってかなり痛い。これは誤魔化してどうにかなるレベルじゃないだろう。 内心相当焦っている割にはどういう訳か俺は今の状況を冷静に分析していた。 ゆっくりと後ろを振り返り、怒り心頭今にも爆発しそうな顔をしている管理人と向き合う。 「・・・・カードで良いか?」 恐る恐る言った言葉に、その管理人はニッコリと怖いくらいの満面の笑みで答えた。 「・・・・おい、水無瀬。」 馬鹿にならない程の大金を支払わされ、半ばそのショックで魂が抜けかけていた俺は何はともあれ、奴が居そうな場所へと向かった。 案の定、奴は薬物系サイトを一望出来る丘の上、某同好会跡地の木の下で寝転んでいた。 寝ているのか目を瞑っていてピクリともしない。 「・・・おい、聞いているのか?」 頭の上で名前を呼んでやっても眼を覚まさない奴に俺はイライラしながら再び話しかける。 が、それでも相変わらず返答はなし。 「・・・おい。いい加減起きろ・・・。この馬鹿が!」 流石の俺もこれにはキレた。遠慮なく、思い切り奴の頭を後方から蹴飛ばしてやる。 ガン。だとかゴン。だとか、そんな鈍い音がして奴の頭が45°ぐらい前方にふわっと浮かぶ。 が、それでも起きなかったのか、ドサッという音と共に奴の頭はまた、草地の上に転がった。 「・・・・・おい・・・・?」 そんなことをしてもさっきまでと同じでピクリとも動かない奴を見て、俺はにわかに不安な気持ちになった。 さっきの蹴りは我ながら見事だ。と思うくらいクリーンヒットしていた。 もしや、蹴りどころが悪くて脳震盪でも起こしたのか?と俺は思った訳だ。 「水無瀬・・・。起きろ。大丈夫か・・・?」 不安になって、立っていた姿勢から腰を下ろして奴の顔を覗き込む。と・・・。 「・・・・!?!!??!!」 突然奴の目がかっと見開かれてグリンッと眼球が動き、こっちを睨み付けやがった。 「・・・・おう。おはよう・・・・・・・・・・っ!?」 これにはかなり動揺した。が、こいつの前であたふた動揺した姿なんてのを見せられる訳もない。 何とか平静を保って、一番無難と思われる言葉を奴にかけてみた訳だ。 が、次の瞬間。はたまた滅茶苦茶な事を奴はやりやがった。 覗き込んでいる俺の襟元を奴は突然掴むとグイッと前方へと放り投げたのだ。 とっさの事で受身を取れなかった俺は首からモロに地面に激突し、一瞬意識を失いかけた。 「・・・・てめ・・・っ、何する・・・!」 反撃しようと身を起こそうとした俺だったが、それはとき既に遅く・・・。 奴が狂気に彩られた瞳をして俺の上に乗っかっていた。 ここで殺やれるか!?って思ったが、そんな事で諦めるような俺じゃない。 振り上げられた拳を手首を掴んで受け止めるとそれに気を取られた奴の一瞬の隙をついて腹を思い切り、蹴り上げてやった。 「ふざけてんじゃねぇぞ!このアホがぁ!!」 気合一発。渾身の一撃で放ったその蹴りの破壊力は自分でも驚くくらい半端なかったらしく、奴は木の根元まで吹っ飛ぶと微動だにしなくなった。 ・・・長い人生の中でこの時程、格闘技をやっていてよかったと思った事はなかった。 「・・・で、さっきのは一体なんのヤクをやっていたんだ?」 「・・・・・・・・・L、LSDです。」 口元をひく付かせながら俺が聞くと奴はビクリと怯えながら答えてきた。 「・・・それで、バットトリップに入ったって訳か。どうせならMDAでもやっとけ。」 「いや待て、焔。アレはその場は良いんだけど、翌日結構辛いんだ。」 「・・・・フーン。」 「・・・・・・・・・・いや、正直スマンカッタ。」 冷ややかな目で睨みつけるとこれ以上何か言うのはマズイと悟ったのか、奴は居住まいを直し、ペコリと頭を下げた。 「どうでも良いが・・・、あとで薬の金払えよ。」 「はーい。」 ・・・かなりの時間待ってようやく薬の抜けた水無瀬と話す事が出来た。 もうそこら辺に放っておいてもよかったんだが、そうすると奴の代わりに支払った薬の代金を払って貰えなくなる恐れがあった為、仕方なく待ってやったんだ。 いつ起きるか判ったもんじゃなかったから、どこかに遊びにいくという訳にも行かず。 俺の一日のほとんどはこいつの為に費やされちまった。という訳だ。 ・・・まぁ、どういう訳か機嫌が猛烈に悪かったのはこいつをボコしてスッキリしたから、そういう意味じゃ役に立ったのかもな。なんて思ってみる。 「・・・・・・おい。」 「んぁ?なにさ、焔。」 「俺にも一粒くれ。」 「お。焔もやる気になったんか。ほらよ。」 手のひらにコロン。とLSDの粒が転がる。 あの一軒以来、どういう訳か知らないがやたらこいつと絡む時間が増えたような気がする。 まぁ、それはそれで刺激・・・、もといトラブルが絶えなくて面白いといっちゃ面白いんだがな。 「バットトリップすんなよーw」 「馬鹿が。てめぇじゃあるまいし、する訳ねぇだろ。」 「んなっ!そりゃどういう意味だよ!!」 「そのまんまの意味ですが、何か?」 「ムキー!!」 ・・・まぁ、アレだな。俺にしては柄にもない事を思った訳だが。 こういう馬鹿をやるのも意外と悪くはないもんだ。 END |
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